2000年に手がけたポートランドのパール・ディストリクトにあるワイデン+ケネディ本社の革新的なデザインで一躍有名になりました。最近では有名な映画制作会社の新しいスタジオと、コロラド州デンバーに完成した待望のクリフォード・スティル博物館を手がけています。
私たちはアライド・ワークスニューヨークオフィスのディレクター、Brent Linden氏に事務所の作品や制作過程、SketchUp Proの使用法などについてお話を聞くことができました。
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どのようなプロジェクトに携わっていますか
アライド・ワークスではあらゆるものをデザインしますが、博物館や展示スペース、創造的なデザインのオフィスや教育施設などに携わることが多いです。この分野の研究をよくしていますが、他のプログラムにも同じように積極的に取り組んでいます。アライド・ワークスといえば、(創設者である)Brad Cloepfil氏が膨大なメモ書きと木炭の山の中に座っているイメージがあります。彼は大量のジェスチャードローイングや光の研究、パーティーダイヤグラムや抽象的レンダリングを作成し、その数年後に建物が完成しています。
この間の過程はどうなっているんですか?
クリフォード・スティル博物館についてお話しましょう。この博物館はコンペの案件でした。おっしゃるようにBradは非常に洞察力があります。木炭とパステルは彼の強力なツールです。
この博物館はまさに大地と光とのプロジェクトで、木炭がパーフェクトな素材でした。彼がオフィスにやってくると、彼は大地と空とが交わるスケッチを描き始めました。
私たちは構造工学技術者や造園家など、オフィスメンバー以外の外部の人も含めてデザインチームを形成しています。私たちは文化や都市、経済、(壮大な)ユーザーエクスペリエンスや構造など、全ての力が含まれているパラメーターとはいったい何なのかを、時間をかけて研究しています。
形は全てのデザイン要素が交じり合って形成されています。私たちは素材モデルを重点的に調査し、本質を引き出そうとたくさんのコンセプトモデルを作成しました。
それは実際に作成したモデルですか、それともデジタルで作成したモデルですか。
今回のケースでは、実際にモデルを作成しました。私たちは素材を扱ったり会議を開いて、ユーザーエクスペリエンスや形やプロジェクトのメッセージを理解しようとしています。「メッセージ」は私たちが思いついた唯一の言葉です。場所はどうでしょうか?素材が人の経験に何か働きかけることはあるのでしょうか?私たちのデザイン作品は、空間と形の統合に向けて努力しています。形それ自体は一つの固体として理解されようとします。クリフォード・スティル博物館がまさにそうです。外部からはシンプルな立体に見えますが、内部は空間が曲がりくねっています。升目が9つある立方体のようです。連続した空間を感じられるように、ある面は無くなっており、ある面は他の面と続いています。
このようなプロジェクトで実物モデルを使うメリットは、モデルを実際に触れることもでき様々な方向から見ることができます。デジタル3Dモデルは早く作成できることがメリットです。
クリフォード・スティル博物館は3Dモデルで建物内部を調査する初めてのプロジェクトになりました。早くて軽いという理由で主にSketchUp Proを使用しました。Bradを始めメンバー全員が使用することになりました。
Bradも操作を覚え、プロジェクトの終わりには、コンクリート壁の並び方や可動式パーティションなどを変更したときの空間の違いを、3Dモデルを動かして確認するだけになりました。
建物内を思い通りに確認することができました。
いつも内側から外側にデザインを考えるのでしょうか?それとも外側には別にアイデアがあるのでしょうか?
内側と外側はお互い影響し合いますが、構造のアイデアと景観のアイデア、そしてユーザーエクスペリエンスのアイデアは同時に発生すると思います。多くのプロジェクトでは、最終的にはどちらのデザインも完璧だと感じられるようになります。私たちはファサード(外壁)よりも建物内を移動するユーザーエクスペリエンスを重視するようになっています。
3Dでの調査、描写、結果;SketchUp(上)、Maxwell Render(中央)、写真(Jeremy Bitterman氏)
アライド・ワークスでの製作過程でSketchUp Proの使い方を、もう少し詳しくお聞かせください。
SketchUpはデザイン研究やビジュアライゼーションの目的で使用するツールです。またモデル作成やレンダリング、スケッチに使うこともあります。ベクターイメージをエクスポートして平面と立面図か断面図にします。時々略図に使うこともあります。実際、略図はかなり使いやすいです。特に3D不等角投影図か断面透視図が必要とされる構想段階やコンペで役に立ちます。
私たちはNational Music Centreプロジェクトのアニメーション用にSketchUpを使ってモデル作成し、マーケティングのために大規模なレンダリングを行いました。
「現象学」という言葉を使う事務所は建築のことをよく考えているという話を聞いたことがあります。先ほど光やマテリアル、人々が感じる空間についてお話されていましたが、アライド・ワークスのオペレーターとしてSketchUpには特に使いやすいと思ったことが何かありますか?
空間がどのようになるか、私たちのビジョンを現実化できるツールが必要です。
マテリアルと光、空間の配置が重要になります。この3つのうち、最後の空間の配置はSketchUpを使っています。実物モデルを使って何度も繰り返すのは完成に時間がかかりすぎるので、SkethcUPはとても早くて助かっています。
空間の配置を考える他の方法は、空間を作り出すことです。空間を作り出すたくさんの面の中に座っていたら、そしてそこから3階上のカーネル空間を見ることができたら・・そしてアトリウムや壁のマトリックスなどをみることができたら・・それは実物モデルをつくるか、または3Dソフトを使うことでしか経験できません。
私たちがSketchUpを使う理由は、たくさんのイタレーション(繰返し)をとても早く作成できるからです。私たちのデザイン過程は本当に繰返しを何度も行います。
クリフォード・スティル博物館では、複雑な空間の生命体のように、また同時に一つの固体のように感じられるように、私たちは壁や床面、屋根の面の配置を何度も繰返し試します。
この二つの課題を一緒に考えるのは難しいです。私たちは基本的に同じことを繰り返して何千ものモデルを作成します。
本当に何千も作るんですか?
そうです。本格的なモデルではなく、研究のためのモデルです。私たちは空間を移動するアニメーション編集でシーンを使います。一点透視図法ではないからです。実際に空間を移動する体験ができます。
人々はじっと立ったままではいません。シーンとシーンをクリックして移動すると空間がどのように広がっていくかを検証することができます。小さな物理モデルが手の中で向きを変えるようなものです。でもSketchUpを使うと、本当に中にいるように感じられます。
他にどんなツールをお使いですか?SketchUpは他のツールキットとどのように相互に作用してデザイン作業をサポートしていますか?
多くの手書きの図面やスケッチは、詳細なところを書き出す役目をします。たくさんの写真コラージュは主にPhotoShopで行います。空間を変化させることでたくさんのコンセプトモデルが生まれます。私たちのコンセプトモデルは白いフォームコアで作ったモデルではありません。
私が作成するモデルは金属やコンクリート、ガラスを加工して作成するものです。
私たちは職人にガラスの破片を大きな木切れに打ち込む作業をお願いしました。彼はガラスを割らずに打ち付ける方法を理解していましたが、こんなことは馬鹿げています。
こういったものを私たちはデザインの初期段階のツールとして使っています。
プログラミングや計画段階でダイヤグラミング(略図)やプランニングをするためにVectorworksや製図ソフト、IllustratorやPhotoshop、SketchUp Proを使います。図式のデザインをするときは、基本的に同じツールセットで、そしてデザイン開発にも使います。
同じように詳細なコンセプトモデルも作ります。私たちはSketchUp ProとMaxwellを使って空間で細かいところがどのように見えるか、光がどのように作用するかをビジュアライズします。私たちはArup Lighting Designと一緒によく仕事をします。過去には、Arupが光の分析で使うために1/12モデルを作成したこともあります。最近は3DモデルをSketchUp Proでモデリングすることが多いです。Arupはそのモデルを虹色にレンダリングして返してきて、どこの光が強くてどこの光が弱いかがわかるようになります。
SketchUpからVectorworksのワークフローはどうですか?
プロジェクトによりますが、私たちはSketchUp ProからベクターグラフィックをエクスポートしてVectorworksにインポートし、図面の基線として使います。クリフォード・スティル博物館では、図面に100%正確なモデルを作成しました。メンバーは製図をしていたときよりもモデルを使って詳細なデザインを行っています。それでSketchUpモデルは実際の建物を反映していましたか?
ほとんどできていました。設計監理期間は、通常変更が入るのでメンバーは作業をしませんでした。私たちは機械エンジニアと協力するために100%CDモデルを使用しました。彼らはSketchUpを使っているか他のソフトに変換しているのかはわかりませんが、役に立っているのは事実です。多くのプロジェクトのように、機械の空間は本当に厳密なので調整が大変です。3Dモデルがあると非常に助かります。Pro版を使用して特によかったと思うことはありますか?
一通りPro版を使ってみると、主に他のソフトとの連携など、無料版ではできないことがたくさんあります。DXFやDWGでSketchUp ProとVectorWorksで何度も行ったり来たりします。また3DSでRhinoとSketchUpとやり取りをすることもあります。またMXSファイルをMaxwell Render Suiteで使うこともあります。
SketchUp Pro8で立体モデリングをするのも好きです。私たちは多くの家具を手がけており、SketchUp Proでモデリングしています。現在作成している家具は、ソリッド・ボディー(固形物)に彫刻をするアイデアをよく使っています。それでソリッド・ボディをモデリングして彫刻の形もモデリングします。そしてソリッド・ボディから彫刻モデリングの形を差し引きます。
SketchUp Pro8のソリッドツールが使える前は、両方の形を作って交差させてエッジを出し、かつ関係の無い面を削除しないといけませんでしたが、今はその必要はありません。ソリッドツールは本当に素晴らしいツールです。
もしSketchUpが使えなくなったら、デザイン業務にどのような影響が出ますか?
誰かが同じようなソフトで早く動くものを探してくると思いますが、これ以上早く動くソフトは見たことがありません。デザインのイタレーションやビジュアライゼーションのモデル作成が遅くなるので、全てのスケジュールが遅れるでしょう。大変だと思います。SketchUp Proが使えなくなるなんて考えられないです。投稿:Aidan Chopra、SketchUpエバンジェリスト
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