彼の舞台美術はテレビ、ブロードウェイやラスベガスなどで使われています。
アンディは SketchUp Pro を活用してデザイン作業を行っており、今回は
- アンディが仕事として舞台美術を創るようになったいきさつ
- 3D がどのように彼の仕事を変化させたか
Q: どのような舞台美術を手がけていらっしゃいますか?
私の仕事は、この業界ではあまり知られていませんが仕事は広範囲にわたります。
基本的に私は舞台芸術家なのですが、私にはアートディレクター、プロダクションデザイナー、シーンデザイナー、シーノグラファーなどのステキな肩書きもあります。
我々の業界の人たちの大半は一つの分野に特化する傾向があります。
例えばブロードウェイの劇場で舞台美術に携わる人たちは滅多に(もしあればのことですが)テレビの仕事をしません。 テレビで「ドラマ」の美術スタッフをしている者は、エンターテインメントの仕事(「○○大賞」や「○○大会」といった番組)をしません。
そしてオペラやバレエの仕事をする人はミュージカル劇場の仕事をしません。
映画の美術スタッフは映画の仕事だけをします。
ロックンミュージシャンなどのツアーデザイナーもまたスペシャリストです。
私はテレビで有名なエンターテインメント番組や、ブロードウェイミュージカル、ラスベガスの興行、美術館の企画、氷上ショー、客船でのパフォーマンス、テーマパーク、サーカス、企業のイベント、等々、全てのデザインをするという点で珍しい種類の人間に分類されます。
私は基本的にエンターテインメントであれば、どのようなジャンルの美術でも手がけるのです。
ゴールデンタイムのテニス番組のウィンブルドン特集用セット
Q: 舞台美術の世界で仕事をするようになったいきさつは?
私は芸人の家庭に生まれました。曽祖父はとても有名な英国のコメディアンでした。祖母は無声映画のピアノ奏者で、祖父はビッグバンドのバス奏者、そして父は有名なコメディアンでした。ですから、私は劇場やテレビスタジオやサーカスなどの舞台裏で育ったのです。
子供の頃、私はテレビカメラマンになりたかったので母は私にブロックのおもちゃであるLegoのテレビカメラ・クルーシリーズを買ってくれました。それで、私はLegoのテレビを作って、小さなプラスチックのクルーに放映の仕事をさせたりして遊んでいました。Legoのモデルは日に日に精巧になっていったものです。そしてある日、家族ぐるみでお付き合いのあるマジシャンのポール・ダニエル氏(彼は英国のデビッド・カッパーフィールドと言われています)に私が作ったLegoモデルを見せると、「あなたは舞台で何が大切かをよくわかっているね」と言われました。私はますますLegoに没頭しました。
Q:多くのプロジェクトに取り組みましたか?
わずかですよ。最も有名なのは”ミリオネア”の舞台デザインでしょうか(私がSketchUp Proを使い始める前のことですが)。この番組は世界108カ国で放映されましたが、すべて同じ舞台デザインが使われました。私が設計した舞台の中でも、もっとも沢山、コピーされたものだと思います。このセットは、アカデミー賞を受賞した「スラムドッグ ミリオネア」の中でも使われました。
また、私はアメリカのテレビの歴史の中で、最も成功したといわれる「American Idol」という番組の舞台もデザインしました。私はこのデザインで3部門のエミー賞にノミネートされ、最優秀舞台美術賞を受賞しました。
私は他にも「America’s Got Talent, So You Think You Can Dance」や、その他にも有名ないくつかの番組の仕事もしてきました。
2009年にエミー賞を受賞した「American Idol」の舞台デザイン
Q:あなたは、あなたの仕事のどの様な部分を気に入っていますか?
数か月後には完成するであろう自分の設計作品をバーチャルの世界でじっくりと歩き回ることが私の究極の楽しみになっています。
私の作品の多くは100フィート×200フィートのスタジオの大きさにはまるものです。実際のセットができる10週間も前に、(SketchUp Proで作成された3Dモデルを使って)頭の中で作り上げた作品の中を自由に歩き回っているなんて驚くべきことです。
私は多くのデザイナーが大いなる妄想者であると思うし、そうなる理由もわかっているつもりです。
”extreme musical chairs”バライティーショーのコンセプトデザイン
Q: どれくらいの時間、3Dモデリングのソフトウェアを使って仕事をしましたか?
私は90年代の初頭にMacのフルセットを購入しました。まるで運命であったかの様に、Macが届くのと同じ週に大きな仕事が舞い込み、製図台と鉛筆という環境からデジタルツールに変更する為の手順を学習する時間がありませんでした。
それからは別の仕事が次から次への舞い込み仕事がなくなることはありませんでしたが、そのことは同時に新しいツールを活用して仕事をするにもツールを学習する時間がないということも意味していました。
それから10年後、私は”American Idol”の仕事の為にアメリカに拠点を移しました。 アメリカに着いてすぐにbells-and-whistleの製図台を購入し、Henson Studiosにデザインの為の事務所スペースを借りました。早速、製図台に紙を広げて設計図を描こうとする私を同僚達は嘲笑しました。
私はしかたなくベクターワークスのスクールに通いましたが、最初の1ヶ月は悪戦苦闘の毎日でした。 インストラクターのDon Jordan氏は、根気強く私に教えてくれたと感謝しています。そんなある日、彼は授業の後で簡単に使えるソフトウェアを紹介してくれました。それこそがSketchUp Proでした。私はSketchUp Proを見た時の衝撃は今でも覚えています。
私はたちまち恋に落ちてしまいました。勿論、相手はSketchUp Proです。
音楽家は楽器を使って直感的に演奏ができます。でも、私に楽器を渡されても何もできません。私にとっては即座に演奏できる楽器のひとつがまさにSketchUp Proだったのです。
Q: 舞台デザインにおいて、3Dの重要な要素は?
その答えは、SketchUp Proがすべて持っていますよ。
私は新しい催物の打合せに参加すると、すぐにオフィスに戻って鉛筆でラフな図面を書き始めます。次に図面を模型製作者(彼らには毎週金曜日に賃金を支払わなければならなかった)にもっていきました。模型ができるまで1週間以上を要し、(混み合っている)列車に乗って完成した模型を受け取りにいくことが当たり前になっていました。
完成した模型は必ず変更が必要になるので私の助手達が模型を解体し修正することになります。 これらの一連の流れは非常にコストがかかり時間も浪費します。模型の材料代は安くないし、更に保管するスペースを確保しなくてはなりません。また使われる接着剤から出る有害物質にも悩まされていました。
初期の”American Idol”の舞台デザインのひとつ
今、私はSketchUp Proのおかげで、事務所さえも必要なくなってきています。
最初の打合せが終わったら(複雑な)モデルをSketchUp Proで1日(または最長でも2日)で作成します。これにはオフィスも助手も設備も必要ないし、もちろん有害なガスも発生しません。
私は今、プロデューサーにデザインをEメールで送ることができるし、デザインに変更があればホテルや空港、スターバックスなどどこでもすぐにSketchUpファイルに修正を加えて変更ができます。オフィスまで移動する必要もないのです。
私は何度でも言います。
「SketchUp Proはなんて素晴らしいのでしょうか!生活を劇的に変えてくれたツールです。」
Q: 舞台デザインをするにあたって、SketchUpに要望がありますか?
光沢のある床などの質感です。エンターテイメントの舞台では光沢のある素材や反射する素材が非常に多く使われています。それはショービジネスの世界を華やかに彩るのに非常に重要な要素なのです。 これらを表現するのは難しい課題です。
私は時々、床にややくすんだ透明なサーフェスを割り当て、Z軸のマイナス領域に上部のステージの反転コピーを配置します。
床が反射して床面にステージ上のものが映し出されるシーンではこのように下に反転したモデルを配置することで床が反射して映し出しているのと同じような状況ができます。実際には反射した風景ではなく、床下のモデルを見ているのですが。
Q: SketchUp Proユーザーに、何かアドバイスをいただけますか?
私はSketchUp Proでできないような表現などに直面した時には、他のソフトウェアを利用しないで、自分で手法を考えてSketchUp Pro内でなんとか解決してきました。
皆さんは乱暴な運転をするドライバーを見たことがあるでしょう。彼らは恐らくは普通に運転しているつもりです。しかしハンドルを動かす手は間違った動きをしていて安全運転とは程遠いですよね。
私にとってはSketchUp Proも同じことです。SketchUp Proは私に時間の短縮という偉大なことをさせてくれるツールですが単に早く操作をするという以外にもっと時間を節約できる改善策があるんじゃないかと常に考えています。
今年SketchUp Proの基本的な事項をマスターする為に、エキスパートとのマンツーマンのトレーニングを受講しようと心に決めています。これらの指導を受けることで最高のモデリングスピードに耐えうるべく、ハンドルを10時と2時の位置ででしっかり持つことのような何か効果的なことを得られると期待しています。
投稿:Mark Harrison, SketchUp チーム
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